SAUNA COLUMN

第3回 硫黄島に湧き立つ、サウナの野趣

太平洋の火山島、燃える硫黄島へ

十数年前、太平洋戦争における激戦地であった硫黄島に行く機会を得ました。現在硫黄島には、民間人は住んでおらず、航空自衛隊と海上自衛隊の基地として使われています。その自衛隊の施設にサウナを納品する仕事で行ったのです。硫黄島は、その名が表しているように地表のあちらこちらからぐずぐずと硫黄水が湧き出していました。元々海底火山が隆起してできた島で、今でも地下では火山活動がエネルギッシュに行われています。地面は地熱で熱く、水道管を埋設するとお湯になってしまうので、地表に浮かしてありました。サウナを納品する目的で行ったにもかかわらず、自衛隊の担当者から「自然のサウナがあるので案内します」と言われ、宿舎を出てついて行きました。

大自然が作った、至極のサウナ

しばらく海岸を歩いて行きますと、ちょうど滑走路の真下あたりに横穴がありました。「ここです」と言われて、中を見ると木のベンチが備えられていました。でも照明はなく、暗い洞穴です。さっそく裸になり、足元に気を配りながら入ってみると、熱い蒸気が出ていました。「綺麗な空気を吸いながら、もうすぐ沈む夕日を見て入る自然のサウナは、気持ちいいなぁ~」と思って外をながめていると、訓練を終えた戦闘機が基地に帰って来るのが見えました。低空飛行で近づいて来た戦闘機は、我々が入っているサウナのすぐ真上から滑走路へ進入し着陸したのです。なんとも言えない体験だったのですが、「あれこそ野趣のあるサウナだったな~」と今でも懐かしく思い出します。

サウナに宿る、「野趣」と「知恵」

「サウナには野趣がある。」このキャッチコピーは、中山産業株式会社(現在の株式会社メトス)さんがサウナの広告に使っていた言葉です。フィンランドで生まれたサウナは、元々湖のほとりに建てられていました。石を薪火で焼き、木でできたサウナ小屋にその熱気を出したのがスモークサウナです。煙を出してその熱気で汗をかき、次に火照った身体を冷やすために素っ裸で外へ飛び出し、湖へ飛び込んだようです。想像するに実に滑稽な光景ですよね!自然の力を借りながら、自らの健康を考えていった先人達の知恵には脱帽です。日本では、消防署や保健所の指導でなかなか使う側が理想とするサウナが作れないのが現状なのですが、「本当に気持ちのいいサウナ」とは、すぐ傍に自然の空気と自然の景色が存在するというものかもしれません。
夏は冷房で気づかないうちに身体が冷えてしまいます。「冷えは万病の元」ですから、サウナで身体を温めて汗をたくさん出し、新陳代謝を高めて夏風邪をひかないようにしたいものです。